自己紹介
1963年生まれの独身男性。広告会社で長年働いた挙げ句、他人の商品の広告作りに飽き飽きし、長年の夢であった映画製作を決意。日本で自主映画を作りながら、米国の有名映画大学に出願し続け、3年目にしてようやく憧れのUCLAから合格通知をゲット。1993年、29歳で自費留学を決行。UCLA映画学部大学院の監督コースに在籍し、現在、卒業映画の編集中。
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(左上)卒業映画「Broken Guitar」の撮影中
(右上)「Transformation」の撮影中
(下)卒業映画「Broken Guitar」のワンシーン
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このレポートの主旨
このレポートでは、米国での映画教育の実態として、UCLAでのコースワークを、12回にわたり、できるだけ具体的に紹介する。
僕は、日本の映画学校で学んだ事は無いので、その実態はわからない。が、座って聴くだけの座学が多かったり、カメラや照明機材をポンと渡され、「さあ、何でも良いから撮ってみろ」という、ほったらかしの製作実習が多いという話は聞いた事がある。何でもかんでも米国のやり方が良いとは思わないが、映画産業の規模の差から言って、新しい映画人の輩出という役割を担う教育に関しては、米国の方が断然しっかりしているのではないか。と言うことで、日米の比較はせず、米国での教育実態に的を絞り、その一例として僕の経験を紹介していこうと思う。
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映画学部の紹介
UCLA映画学部は米国の三大映画学校の一つで、ハリウッドに隣接しており、フランシス・F・コッポラ監督の出身校として有名だ。学部全体は、学部と大学院のレベルで構成されていて、学部レベルでは映画一般が幅広く教えられ、大学院では専攻分野に分かれ専門的教育が行われている。大学院の専門コースは、監督、プロデューサー、脚本家、アニメーション作家、批評家の5つがある。この5つのうちで実際に映画を製作するのは、僕のいる監督コースの学生だ。カリキュラムは約4年間で、この期間内で、映画製作から、ビデオ、ドキュメンタリー、実験映画、マルチメディア作品の実製作をみっちり学び、平行して、古今東西の名作を鑑賞しながら、映画スタイル、映画理論、映画史、業界情報などの集中的な講義を受ける。
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監督コースの概要
UCLA大学院監督コースのコースワークは大きく3つに分けられる。「映画の実製作」「ワークショップ」「ゼミ」の三つだ。
中心となるのは映画の実製作で、これにもっとも時間とエネルギーが注ぎ込まれる。教授に教えてもらうと言うよりも、製作は学生自身の自主性に委ねられ、学生自身で脚本を書き、俳優とスタッフを見つけ、ロケ現場と交渉する。教授は、その時々でアドバイスをくれると言った形だ。こうして、16mmの短編映画を自分で監督製作していくわけだ。一年に一本のペースで製作し、卒業までの3〜4年で、3本以上の映画を作る事になる。ワークショップでは、撮影や照明の仕方、演技指導の仕方、CGの作り方など、映画の実製作に必要な基礎的なテクニックを、スタジオやラボで、教授の指導のもとトレーニングしていく。カンヌで賞を取った南アルゼンチンのサリナス監督などが飛び入りで2日だけのワークショップを持ったこともあった。
ゼミは、10人程度のクラスで、自分が興味を持つテーマのゼミを選んで受ける。監督コースでは、卒業するまでに3つ以上のゼミを履修しなければならない。テーマには、例えばクラッシック映画理論や、ロシア映画といったものがあり、映画理論本を何冊も出しているような先生や、元ソニーピクチャーズの社長か会長だったピーターグーバーなどの大物が教壇に立っていたりする。生々しい業界の裏話を聞けたり、まじめに過去の名作のレビューやディスカッションが行われたりする。
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レポート12回分の構成
上記の「実製作」「ワークショップ」「ゼミ」の3つ分野でレポートする。
現在予定している内容は次の通り(順は未定)。
・映画実製作
1. シナリオ製作、オーディション、スタッフ探し、リハーサル
2. 撮影準備(ロケハン、小道具)
3. 撮影
4. 編集(アビッド、音楽、フェスティバル)
・ワークショップ
1. 撮影・照明ワークショップ
2. 演技指導ワークショップ
3. CGワークショップ
・ゼミ
1. ロシアドキュメンタリー映画
2. クラッシックフィルム
3. 演出スタイル
・番外
1. 出願から入学、学生生活、お金の話
それでは、来月から、いよいよ具体的な授業内容のレポートに入ります。お楽しみに!
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