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特集:ストーリーアナリスト
 
特集:ストーリーアナリスト  
今、日本の映画界に最も必要なものは何でしょう。これは、いろいろと意見が別れる問いかけかもしれません。ストーリーアーツ&サイエンス研究所はこう考えています。最も必要なもの、それはストーリーや脚本を的確に分析・評価できる人材、つまり“ストーリーアナリスト”ではないかと。
ストーリーアナリストとは
ハリウッドにおけるストーリーアナリストとは、簡単に言えば、ストーリーや脚本の分析・評価をおこなう人のことです。日本では現在、この職種に該当するものはありません。
ハリウッドでは、作家個人が脚本や小説を持ち込むことはほとんどなく、エージェントを通して制作会社に持ち込まれます。その際、ストーリーアナリストは一番最初にその脚本を読み、カバレッジと呼ばれる報告書を提出する仕事をおこなっています。
カバレッジの基本構成は、シノプシス(脚本のあらすじ)とその脚本が作品化するだけの価値のあるものかどうかの評価を記したコメント、評価表の3つからなっています。

※シノプシスの言葉の解釈は日米で大きな違いがあります。
  1. ハリウッドではシノプシスはアナリストが書くものです。日本では脚本家が書きます。
  2. 内容的にも、前者は新聞記事のようにストーリーの流れに沿って、客観的に書きます。後者もストーリーを伝えることにおいては同じですが、ライターの主観や脚色的な部分が入ってきます。

そのカバレッジを元に、大手スタジオのエグゼクティブやプロデューサーは、その脚本を採用するかどうかの判断を行ないます。つまり、制作会社の門番のような役目をアナリストは担っている訳です。さらに、優れたストーリーアナリストは、脚本のディベロップメント(これは、単なる直しではなく、実際の作品として制作される状態に持っていくために、さらなる発展的な意見を述べて、作品をよりよい状態に持っていく手助けを指す)をおこないます。

近年、ハリウッドで活躍している優秀なプロデューサー、監督、ライターや大手スタジオのエグゼクティブの多くはストーリーアナリストの経験があります。なぜなら、自分のプロジェクトのストーリーや脚本が映画化(商品化)に値するものなのか自分自身でジャッジメントできるからです。

ハリウッドでのストーリーアナリストの位置付け
その重要性はみんなが認識しているにも拘わらず、位置づけは決して高いとは言えません。その理由は、
  1. プロダクションの一番入り口に位置する仕事である(ということは逆にここを通らなければ先へは進めないことも意味している)。
  2. 究極的な職業でなくさらに上のレベル(脚本家、ディベロップメント部門、プロデューサー)に上がるためのステップとしてやる人がほとんどである。
  3. 映画製作のプロセスの中では、CREATIVEというよりも EDITORIALな仕事である。いわば、野球のアンパイヤのようなもの。いなければ試合にならない重要な人だが、プレイヤーではない。
重要なこと
ストーリーが映画としてうまく機能するための構成 − 建物の骨組みのように表面には見えないが、陰でしっかりと建造物を支えているもの − があるということ。
さらに、「何が」うまく機能するか、にとどまらず、「なぜ」それがうまく働くかを知ることが重要である。
ストーリーアナリシスの適用性
  1. プロデューサー:
    企画をプロデュースする際の分析・評価。

  2. シナリオライター:
    様々な作品を分析・評価することにより自作品を客観的評価。

  3. 製作会社:
    映像化に当たって、企画スクリーニング、キャスティングの参考、シナリオの最終チェック、と複合的なニーズ。

    ※ゲーム・出版においても同様。

  4. 配給会社:
    とくに洋画配給において、現在も一部個別に外国人アナリストを使っているが、もっと体系的に日本人アナリストを養成することによりマーケットニーズ等を捉えた分析・評価が可能。

  5. 投資家・金融機関 :
    VCや取引銀行のためのレポート。

  6. 芸能プロダクション:
    自社のタレントに向いた内容かどうかのチェック。
    (米国では極めて一般的だが、将来、一部米国のエージェント的なタレントエージェンシーの出現性は高い)

  7. 海外プロモーション:
    グローバルスタンダードなレポートは海外へのプロモーションに有効。
 
 
ストーリーアーツ&サイエンス研究所:
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